ごあいさつ

余野は京都市左京区に位置する小さな集落である。

正確に明記すると「京都府京都市右京区京北細野町余野」である。人口はわずかで、数えられるほどの民家がこじんまりと並び、かつては京都の茶室やお寺の建築を支えた北山丸太産業も使用頻度の衰退の傾向にある。畑や田んぼ、造成林でさえも手入れされず放置されていることが多い。それにより山の雨水貯留能力が落ち、土砂崩れや水質悪化などの公益的機能の低下が問題となっている。

伝統を重んじる京都は国内のみならず国外からも絶大なる人気を誇る観光地である。コロナの影響でインバウンド産業は大打撃を受けたが、それに伴う一次産業の収縮も大きな不安要素である。はじめに「生産」があり、そして「加工」、最後に「流通・販売」という順に一、二、三次産業の連携で経済が回っていることを改めて実感する機会となった。

地方の小さな市町村を困窮させ、零細農家・企業のとどめを刺しにかかるコロナ災害。日本の一次産業が次々と倒れていくことをそのまま見過ごすわけにはいかない。

今回のコロナパンデミックで以前の暮らし方に疑問を持ち始めたのはあなただけではないでしょう。都市部の人口過多による緊急事態時のリスク増加、重要インフラ等災害対策設備の欠陥、不十分な経済的サポート体制など、効率至上主義の資本主義経済システムが産んだメトロポリスの脆弱な実態が明らかになり、より一層社会全体が持続的なライフスタイルを検討する転機が訪れた。これは日本に留まらず、世界共通の社会現象であり、これからSDGs推進理念が普及していこうとしていた時期も重なり、まさに時代が変わるタイミングと言っても過言ではない。(SDGs=持続可能な開発目標)

かねてから全国各地で地域活性化政策としてオーガニック農法や有機性廃棄物を利用したバイオエネルギーの生産など、高付加価値のブランド性を掲げて経済基盤の再構築を図る農山村の動きがあった。余野プロジェクトはグリーンな地域活性化プロジェクトの一つと考えてもらってもいい。つまり、時代の需要に合った「自然資源の完全再利用システム」をデザインし、生産加工技術と環境問題に対する正しい見識をうまく組み合わせ、日本伝統文化の延長にある持続的循環型の生活文化を提唱する。グリーンツーリズム、エコツーリズムと結びつけることによって地域住民全体に利益をもたらし、地に足のついた、質の高い、継続的な繁盛を目指す。

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